家で採れる野菜の新鮮さ・おいしさは身を持って感じているものの、将来父母
が野菜作りを引退して自分と夫が家庭菜園の権限を手にしたら、「これだけは
手を出さない」と決めているものがある。
豆、だ。
今年初めて種まきから収穫までを見てきたが(見ていただけで手伝っていない)、
手間暇がかかりすぎるわりに収穫できたものはちんまりとしている。
流した汗とつり合っていない!と思うのだ。
6月に種まきをして、7月に肉体労働の土寄せ作業。
花が咲く8月半ば過ぎからは乾燥を防ぐべく水やりが欠かせない。
9月に入るとビールのおつまみ「枝豆」として食べられるようになるが、この
時点で全部食べ尽くしてしまっていれば………と思う過酷な作業が後に待っ
ている。
11月に入り寒くなってきた頃、葉が枯れてきたら葉を全て取り除き、12月に入っ
た頃に刈り取って、乾燥するまで雨に濡らさないように陰干しで放置。
猛烈に寒さが厳しくなる12月下旬に、ひとつひとつ手作業で殻から豆を取り出
して、集めた豆を選別したりゴミを取り除く作業が待っている。
手間暇かけた豆の上でサーフィンする息子。
善悪がまだつかない息子が放り投げる豆を、必死になって一粒残らず見つけ出す。
だって、一粒一粒に母の苦労が見えるのだ。
一粒だって無駄にせず、ありがたくお腹に納めなければと思う。
ところで、今年うちで栽培したのは「こさ豆」と呼ばれる種類の豆。
大豆の一種らしいが、一般の大豆よりも緑色がかっているのが特徴だ。
豆腐や味噌を作るには一般の大豆のほうが向いているが、煮物にはこさ豆のほ
うがコクがあっておいしいらしい。
コトコトコト…。
ストーブの上で水煮にしている豆は、乾燥していた時はまん丸だったのに、
不思議なことにふっくらと楕円形に戻る。
黙々と煮豆を頬張る息子を優しい眼差しで見つめていた父母が呟いた。
「今年はもっとたくさんお豆を作らないとね」
どうやら自分と夫の豆作りデビューは近いようだ。
<材料>4人分
・こさ豆(水煮したもの)……200g
・芽ひじき…………………30g
・にんじん…………………1/3本
・油揚げ……………………1/2枚
・だし汁……………………140ml
・酒…………………………大さじ1
・砂糖………………………大さじ2.5
・しょうゆ……………………大さじ2
・ごま油……………………大さじ1
<作り方>
①芽ひじきはたっぷりの水につけて柔らかく戻し、ザルにあげておく。
②にんじんは皮をむき、縦にせん切りにする。
③油揚げは熱湯に通して油抜きをし、縦半分に切り、細切りにする。
④鍋にごま油を中火で熱し、芽ひじき、こさ豆、にんじん、油揚げの順に入れて炒める。
⑤全体に油が回ったらだし汁を加え、ぐつぐつしだしたら酒、砂糖、しょうゆを入れる。
⑥煮汁がほとんどなくなるまで中火で煮たら出来上がり。